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どん底の経営から人気園にまで立て直した!園児の集客方法

「保育園、幼稚園はこれからどんどん潰れるだろう」

そう語るのは、かつて園児集客に苦しんだ園を200人のキャンセル待ちが出るほどの人気園に立て直した、学校法人小泉学園の代表・小泉敏男氏だ。

現在、小泉氏は、保育園、幼稚園合わせて4園を運営し、どの園も人気だという。

保育業界の市場は、子ども・子育て支援新制度と少子化の影響で、今後供給が需要を上回ることが安易に予想できる。すでに地域によっては園児が定員割れしており、集めるのに苦労している保育園や幼稚園もある。

今回は、どん底の経営から人気園にまで立て直した経営者・小泉氏に、これからの幼稚園、保育園の経営に必要な考え方や保育の質を高めるために行ったこと、園児集客のコツを伺った。

保育料1/10の公立幼稚園に勝つには、どうしたら良いか

園児が集まらず悩んだ開園当初

1976年、東京都足立区の公立幼稚園の近くに開園した東京いずみ幼稚園。当時、東京いずみ幼稚園は2年保育、公立幼稚園は1年保育を実施しており、教育時間や定員数はほぼ同じだった。しかし公立幼稚園の保育料は1/10。そのため年長になると公立に転園する園児が多くいた。

翌年、近隣に私立幼稚園が開園したことも重なり、さらに園児集客に悩むことに。

経営者として幼稚園を潰してはいけない、園児を集めるにはどうしたら良いか」、より真剣に考えるようになった。

当時は、幼稚園のポスターを貼るなどの宣伝はタブーとされていた時代。宣伝しようがないので、家へ個別訪問に伺ってアピールしたことも。

しかし、小泉氏は「それだけでは限界があった」という。

この状況をどうにかしようと、他園との差別化を行う必要があると考えた。「子どもを預かる条件は、ほぼ同じ。教育でしか差別化は考えられなかった。保育料も公立の10倍頂いているので、より保育の質、教育活動には責任をもって力を入れなくてはならなかったんだ

保育の質を高めるとはどういうことか?

保育の質を高めるには環境が大切。環境といっても様々だが、特に重要なのは、子どもに携わる保育者だ」

関わる人によって子どもの成長は大きく左右される。しかし現状の保育を見てみると、保育者の得意不得意で左右される部分が大きかったのだ。

例えばA先生はピアノが得意なため、ピアノを保育の中に多く取り入れている。一方B先生はピアノが得意ではないので、あまり使用せず、歌も頻繁に歌わないなどだ。これだと、子どもの情緒の成長に差が出ることが想定される。

カリキュラムを立てていても、園生活のふとしたところで差は生まれてくるのだ。

しかし、ピアノが弾ければ保育の質が高いというわけではない。それは保育の質の良さを判断する基準がないために、何が質の高い保育なのか曖昧になっていたことが原因だろう。

小泉氏は「幼稚園経営を行う上で、幼児教育に正確な基準や方向性がないことに違和感があった」という。保育の質の基準がないので、どう保育者を導いていったら良いかわからなかったのだ。

「保護者からA先生は評判が良くてB先生は評判が悪いとなると、子どもの成長にとって良くない。幼稚園としてもマイナスだ。これは保育者の向上心を上げるだけでは解決しない問題なのだ」

幼稚園の責任者として保育者同士の差を埋め、全体的な保育の質を高めるために、具体的な基準と方向性が必要だった。

なぜ石井式国語教育導入で差別化を選んだのか?

その時出会ったのが”石井式国語教育”。「幼児教育の曖昧さ、基準や方向性がないことについて疑問だった部分の霧が晴れた」

石井式国語教育とは、”漢字絵本やカードなどを用いて読書好きな子に育てる。集中力を高め、使う言葉が豊富になり、情操豊かな心情が育まれる”とされている教育法だ。

「教育方法も具体的に提示されているため、保育者によって子どもの教育活動にバラつきが出ることを防ぐことができる」石井式国語教育の導入により、幼稚園として保育の質における正確な基準と方向性ができたのだ。

「保育者にとっても導入のハードルが低く、どの保育者でも簡単に取り組むことができる点も利点だった」という。

ほとんどの保護者が教育法導入に反対!なぜ人気園に?

園児集客_差別化
東京いずみ幼稚園の教育内容・環境について

最初は「勉強先取りの漢字教育なんてありえない」と誤解もあり、ほとんどの保護者が反対していた。

教育法導入の説明会では「子どもに勉強させるために、いずみ幼稚園を選んだのではない」という言葉も…そのような意見には丁寧に謝り対応をした。

保護者には「子どものことを考えると、今までのやり方で良いとはとてもじゃないけど思えない」と正直な感想を話し、とにかくやってみることを伝えた。それは3日あれば、子どもの成長を実感できるという自信があったからだ。

反対していた保護者ほど関心が高くなり、日を追うごとに賛同してくれるようになった。「それは、実際に子どもの成長を目の当たりにしたからだろう。子どもが成長しているのに反対し続ける保護者はいない」

教育法と聞くと「無理やりやらせているのではないか」など誤解されることも多いが、実際は日常生活に溶け込ませながら、体験できるようにしているのだ。

石井式国語教育導入の翌年には、”ミュージックステップ”という教育法も導入。これらも石井式国語教育同様、情緒を育てる面で必要だった。

楽しい演出で園児募集は200人のキャンセル待ちに

在園児の保護者の共感は得られたが、新入園児の集客には依然として苦戦していた。他の幼稚園では行っていないことをしている、東京いずみ幼稚園に不安を抱かれる方が多かったからだ。

しかし現在は、キャンセル待ちが出るほどの人気園になっている。人気園になったのには訳がある。

保護者の不安を払拭するために、楽しい演出を多くしてきたのだ。

例えば合唱団結成。コンサートを開催し、フェスティバルやコンテストにも積極的に出場し、保護者へ発表した。

東京ヴォーカルアンサンブルコンテストでは金賞や特別賞を連続受賞し、テレビへ出演もした。ポーランドでの演奏旅行も行うなど、園内での発表会だけでは終わらせず、子どもも保育士も保護者も楽しめる演出を多く実施していった。

卒園後も希望者に対しては、国語・算数・アイデアマラソン・体育・合唱を中心に思考力・発想力・表現力等を養える教室を開いており、IQの測定も行っている。在籍児の平均IQは120を超えている。

子育ての喜びを保護者と共有したかった。自分の子どもが舞台で楽しそうに歌っている。卒園後も生き生きと学習に取り組んでいる。保護者が見たらどんなに嬉しいだろうか」小泉氏は嬉しそうに語る。

喜びをどのように伝えるのか、これが大切だ」

保護者に子どもの成長子育ての楽しみを形に変え伝えていくことで、口コミなどで評判が広まり徐々に新入園児も増えてきたという。

東京足立区にあるいずみ幼稚園だが、現在は新宿や品川、東京都以外では埼玉などからも園児が集まっている。他園との差別化を図る前と比べると、近隣の子どもたちだけしか集まっていなかったのが、今では20の市や区から集まるようになったのだ。

近年の園児募集では毎年定員越えとなり、200人ほどのキャンセル待ちが発生している。

教育法を導入したら人気保育園・幼稚園になれるのか?

保育園・幼稚園のパンフレットは、保護者との契約書

園児集客方法例

教育法を導入したから、200人ものキャンセル待ちが発生するまで人気になったのではない。教育法を導入して、パンフレットなどで記載している内容を毎年実現し、保護者に伝えてきたからだ。

「保育園や幼稚園のパンフレットは、保護者との契約書でなければならない」

例えば教育理念、「幼児期に適切な教育を与え、優れた人格を育む」。これを実現するために、具体的にどうしたら成長できるのか考え、カリキュラムを編成しているのだ。

同じように教育メソッドを取り入れたら園児は集まるのか

「我々保育園や幼稚園の経営者は、何のためにこの仕事をしているのか?保護者の気持ちになって、日々の教育生活体験を通して、どのような子どもに育ってほしいのかこの部分を真剣に考えることが大切だ」

当たり前のことだと思われるだろうが、実際はパンフレットで”個人を尊重”など謳っていても、”個人の尊重”とはどういうことなのか、尊重することでどう成長に影響を及ぼすのかまで提示し、実現している園はどのくらいあるのだろうか。

本来的な仕事の意味を考えたら、教育法導入有無に焦点を当てるのではなく、子どもたち、保護者のために何をすべきかがわかるはずだ。その方法の一つが教育法導入なのだ。

まとめ

教育メソッドの導入で、保育園のパンフレットに記載してある内容を実現し、楽しい演出を行ってきたことで、保護者から選ばられる園となった東京いずみ幼稚園。

しかし教育メソッドは、ただ安易に導入すれば良いということではありません。脳科学の知見からも子どもたちの育ちを考え、どのような教育理念、方針をもち、そのためにどのような内容の教育を行うのか、現場の保育者任せではなく、子どもたちをベースとして経営者として考えなければいけません

東京いずみ幼稚園は、保護者からの要望に応え幼稚園だけでなく保育所も開園されました。選ばれる園になるためにあなたは経営者として何を考えますか?

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今回取材させていただいた方
小泉 敏男
1952年、東京生まれ。小学4年生から中学3年生までを対象として運営していた小泉補習塾を経て、1976年、父・小泉孝義とともに東京いずみ幼稚園を創設、副園長に就任。石井式国語教育、ミュージックステップ音感教育、屋内温水プールの設置など、当時としては画期的なプログラムを次々と導入。1995年に園長に就任。2004年には第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞。幼児音楽出版(有)代表、(株)いずみ教育研究所代表も務め、ミュージックステップ普及活動も行っている。著書に『東京いずみ幼稚園式 美しい日本語が、心の強い子を育てる』があり、メディアでも多く取り上げられている。

参考:『2040年までの保育ニーズの将来展望と対応の在り方』