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保育者の定着率アップにも貢献!他園との差別化による副産物

「我々保育園や幼稚園の経営者は、何のためにこの仕事をしているのか?保護者の気持ちになって、日々の教育生活体験を通して、どのような子どもに育ってほしいのかを真剣に考えることが大切です」

前回のインタビューで、学校法人小泉学園の代表・小泉敏男氏はそう語った。子どもたちの育ちを考え教育法を導入し、教育理念を毎年実現し保護者に伝えてきたことで、東京いずみ幼稚園は、今や園児200人のキャンセル待ちが発生するまでの人気園となった。

教育法の導入は、理念を実現させる一つの方法に過ぎない。しかしその一つの方法は、園児集客以外の副産物ももたらしたのだ。今回は、その副産物とは何かをお伝えする。

教育法の導入は保育者の不安を解消させ、定着率を上げる結果になった

入職当初、保育者はどのように保育をしたらよいのか不安を抱いていることが多い。東京いずみ幼稚園では、石井式国語教育やミュージックステップなど様々な教育法を取り入れているため、「自分は何の取柄もない、漢字も苦手、ピアノも得意ではない」と更に不安に感じることもあるようだ。

不安を払拭できないままだと、早期退職につながる恐れもある。

教育法の導入が、保育者の不安を軽減させてくれた

「教育法は保育者を大変にさせるものではありません。良い方向に導くものです。実際は、どの保育者でも簡単に取り組めるようハードルは低くなっています。また、教育法をどのように保育の中に取り入れていけばよいのか、具体的に提示もされています」

具体的に提示されていることは、保育者の不安を軽減させる。その内容に沿って保育を組み立てていけばよいからだ。教育法は保育者に道筋を与えてくれた。

「私自身も音楽ができるわけではない、多言語が話せるわけではない、そもそも頭もよくない。“子どもの教育について”目的が明確だっただけです。

誤解してほしくないのですが、道筋を与えることは、保育者の個性を無くすということではありません。個性とは、ベースがある上に成り立つからです。ベースがなければ個性もわからないでしょう」

不安は自信に変わり、保育者を成長させた

学校法人小泉学園の代表・小泉敏男氏

「以前、子どもから言われた一言を嬉しそうに報告してくれた保育者がいました。

ミュージックステップや音楽を行った後に、子どもたちから『楽しかった先生!明日もまたやろうね!』と言われたと…。

その保育者は、自分の保育にまだ自信を持てていませんでした。そのような時に、覚えた教育法のノウハウで子どもたちに話を聞いてもらえ、楽しいと感じてもらえた経験ができたのです。子どもたちが『楽しかった』と目をキラキラさせ、興味をもって取り組んでくれる、これは保育者としてこの上ない喜びであり、自信につながるできごとでしょう。

できないことができるようになった保育者ほど一生懸命やってくれますし、そういう保育者こそ育て甲斐があります。

園として子どもの育ちを明確に提示せず、基準や方向性を定めていないと、保育者はずっと迷って保育をすることになり、不安を抱えたままになるでしょう。方向性が明確でないということは、手探りで保育をするようなものです」

教育法の導入は、保育者によって子どもの教育活動にバラつきが出ることを防ぐだけでなく、保育者にも道筋を与えてくれる。道筋は不安を少なくし、自信につなげてくれる。それが結果として、定着率アップにつながっていったのだ。

「子どもの育ちを形にするために良いと思うことをやってみて、良くないことは改善し、創意工夫を重ねていくことが基本。それは誰でもできることでしょう。私もそうやって自信をつけていきました。保育者にもそのように育ってほしい。自信はきっかけ一つでつくものです。きっかけ一つで自信をつけ、良い保育者に成長できます

そのきかっけはそれぞれだが、東京いずみ幼稚園では、教育法が自信をつけるきっかけの一つになっている。

教育法は、定着率アップという思わぬ副産物を生んだが、小泉氏は定着率を上げるため更なる構想を練っている。働きやすい職場となるよう、時代に合わせ工夫をしているのだ。産前産後休暇や育児休暇をしっかり取ってもらえるよう声をかけ、取得者も増えてきている。現在は企業内保育所を検討中だ。

「当たり前ですが、長く勤めてもらえることは保育の質にも関わってきます。若い保育者と経験豊富な保育者、両方いることが、園として安定した保育を継続して提供できることにつながっていくでしょう」

まとめ

小泉氏は、2017年から認可保育所も開設し事業を拡大させている。地元の自治体からも教育への取り組みが評価され、認可保育所2園と小規模保育所1園を開設し、計4園運営している。「教育を継続して提供するために、本当は小学校を作りたい」小泉氏は最後にそう語った。

「事業を拡大する経営者の中には、経営者として利益の面での欲もあるかもしれませんが、私はもう若くないので、そちらの欲はほとんどない。保育園を開設した理由は、この地域に、東京いずみ幼稚園の教育に触れた子どもを増やしていきたいからです」

保育や教育に対して信念を持ち、それを実現させるために何が必要か常に考えている小泉氏。理念の実現のために教育法を導入したが、それは思わぬ副産物も呼んだ。子どもへの想いを形にしたことが、保育者の定着率アップ、更には事業拡大にまでつながったのではないだろうか。

今回取材させていただいた方
小泉 敏男
1952年、東京生まれ。小学4年生から中学3年生までを対象として運営していた小泉補習塾を経て、1976年、父・小泉孝義とともに東京いずみ幼稚園を創設、副園長に就任。石井式国語教育、ミュージックステップ音感教育、屋内温水プールの設置など、当時としては画期的なプログラムを次々と導入。1995年に園長に就任。2004年には第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞。幼児音楽出版(有)代表、(株)いずみ教育研究所代表も務め、ミュージックステップ普及活動も行っている。著書に『東京いずみ幼稚園式 美しい日本語が、心の強い子を育てる』があり、メディアでも多く取り上げられている。