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ITから保育業界に参入!面白法人カヤックが考える保育園は、子育て支援の域を超えていた

企業主導型保育所は、定員割れや休園など多くの問題が指摘されている。平成29年度の定員充足率は、約60%しかない。IT業界から保育業界へ新規参入。企業主導型保育所として開園1年で園舎を増設させ、定員を増やし、成長し続ける“まちの保育園 鎌倉”がある。

まちの保育園 鎌倉を経営する、面白法人カヤックの代表取締役、柳澤氏が考える保育経営について伺った。

面白法人カヤック(以下、「カヤック」)とは
正式には株式会社カヤック。鎌倉に本社を置き、ゲーム・広告・Webサービスなど、面白いコンテンツを次々とリリースするクリエイター集団。

IT企業の社長が考える保育園

まちの保育園 鎌倉は、地元の人たちを巻き込み、皆で幸せになろうという鎌倉資本主義というプロジェクトの一つである。

鎌倉資本主義とは

企業主導型保育所で増員した理由
面白法人カヤックの代表取締役 柳澤大輔氏

“鎌倉資本主義”それは、GDPを補足するための新たな指標だ。

GDPは経済活動の状況を示す指標だが、経済的な豊かさを測るための指標としても使われてきた。しかし企業や国がそれだけを追い求めた結果、“地球環境汚染”や“富の格差の拡大”という大きな問題が生まれた。「GDPを追い求めるだけが幸せではない」これは多くの人が感じていることだろう。

「経済成長を重視しながらも、同時に、精神的な豊かさ幸福感を増やしていくことがこれからの社会に必要ではないでしょうか」

そこで柳澤氏は、地域という点に着目したのだ。

「様々な地域が、それぞれの固有の資本を活かして発展していく。そんな地域ならではの新しいかたちの資本主義に、従来の問題を解決するヒントがあるのではないか。そこでたどり着いた1つのコンセプトが、地域を中心とした新しい資本主義のかたち、鎌倉資本主義です」

「鎌倉資本主義には、従来の経済資本(売上や利益)だけでなく、社会関係資本(人と人のつながりやコミュニティ)、環境資本(自然の美しさや豊かさ)も含まれます。この3つを最大化していくことができれば、持続可能な豊かさを実現できるのではないかと思っています」

人と人をつなぐ地域コミュニティとしての保育園

保育業界は未経験のカヤック。運営を全て委託することもできただろう。しかしそうはしなかった。

「まちの保育園 鎌倉は、自社や地域の人たちの子育てを支援することはもちろんですが、そのことを通じて鎌倉に住む人や働く人を増やし、人のつながりを生み出し、地域における社会関係資本を増やしていくコミュニティだと考えています。そうした地域に根づいたコミュニティをつくっていくために、外部に運営を委託するのでなく、自社で運営に関わることにこだわっています」

まちの保育園 鎌倉は、カヤックだけでできた保育園ではない。都内で人気の“まちの保育園”を運営するナチュラルスマイルジャパン株式会社がコンサルティング、逗子葉山の自然環境を活かした幼児教育で人気の認可外幼稚園“おうちえん”を運営する一般社団法人telacoya921が運営、鎌倉に本社を置き鳩サブレーで知られている株式会社豊島屋の協力も経て、それぞれ参画することで、4社共同で運営している。

企業主導型保育所で増員できた要因
保育園の2階はシェアオフィスとしても使用できるため、保護者の通勤時間が短縮され、時間にも心にも余裕が生まれる。保育園には、柳澤氏の地域に根差した保育を実現するための要素や想いが、至る所に感じられる

口コミでつながる保育園の輪

保育園を増設できた一番の要因は、「良いメンバーが集まってくれたことだ」という柳澤氏。良いメンバーを集めるために、IT企業のノウハウを生かしたのかと思ったがそうではなかった。

「“おうちえん”を運営している中尾さんに、当園の園長にご就任いただいたことにより、主に口コミでの募集を実現することができたので、保育士の公募は行いませんでした。口コミで経験豊かな保育士さんに集まっていただけたことにも、人とのつながりを感じますね」

口コミで集まったという保育士は、中尾さんの以前の同僚たちだ。中尾さんの保育観を知っている分、園の理念への理解も早く得られ、保育観の相違による混乱もなく、開園当初から質の良い保育が提供できたという。

理念をベースに良い保育を実現してきたことで、保護者の間で園の活動や保育士の関わりが、良い口コミとして広まっていった。その結果、今回の増設に至ったのだ。

まちの保育園 鎌倉の3つの理念
鎌倉のための保育園
みんなでつくる保育園
人としての根っこを育てる保育

“まちの保育園 鎌倉”を中心に、今後も広がる人とのつながり

企業主導型保育所今後の展望

「子どもたちが仲良くなると、保護者である社員同士が仲良くなったり、会社の壁を超え、別の会社の人たちとのつながりが生まれたりすることが面白いですね。今後もまちに開かれた保育園、会社として、地域と様々な協業をしたいです。近い将来には、学童保育を検討したいと思っています」

そう語る柳澤氏。なぜ人とのつながりを重視するのか。それは、カヤック“面白”の定義を“多様性”としているからだ。「色々な人がいるほうが面白い。多様性があり、一人ひとりが個性を生かし社会で輝くことは、人としての豊かさにつながります」

「12月には、園で株式会社豊島屋の久保田陽彦社長らと共にクリスマス会を開催し、久保田社長はサンタクロースに扮し、僕はトナカイ役でした。保育園の事業を通じ、年代や所属を超えて人のつながりが生まれ、そうした活動を通じて次世代を育んでいけることは、本当に意義の深いことだと自分自身でも実感したんですよね」

まとめ

「まちに開かれた保育園、会社として、地域と様々な協業をできれば」という言葉からもわかるが、カヤックは子どもだけでなく地域全体の幸せを考えて、園経営を行っている。地域全体を考えることが、最終的にはその地域に住む子どもたちの幸せにつながっていく。そのような考え方で保育園を経営していることが、まちの保育園 鎌倉の増設につながったのではないだろうか。

保育所保育指針にも「保護者に対する子育て支援における地域の関係機関等との連携及び協働を図り、保育所全体の体制構築に努めること」「保育所のみで抱え込むことなく、連携や協働を常に意識して、様々な社会資源を活用しながら支援を行うことが求められる」と記載がある。

核家族や少子化が進む時代、これからの子どもたちの幸せを考えると、保育園経営者は保育園、地域の子育て支援、それ以上に視野を広げる必要があるのかもしれない。

次回は、「人とのつながりを生み出す保育園では、具体的に何を行っているのか」まちの保育園 鎌倉の保育観をお伝えする。

今回取材させていただいた方
柳澤 大輔
1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。オリジナリティあるWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲームなどのコンテンツを発信する。2014年に上場。地域活動として、2013年よりITの力で鎌倉を支援する“カマコン”をスタート。2017年より“鎌倉資本主義”を提唱する。著書に『鎌倉資本主義』面白法人カヤック会社案内』『アイデアは考えるな』などがある。

【参考】
#面白法人カヤック社長日記 No.47
平成29年度企業主導型保育施設~定員に対する利用者数の状況について~
保育所保育指針解説