経営者・園長としてやってはいけないマネジメントについて、現場との距離間に焦点を当てお伝えしています。前回は経営者・園長が現場に入ることが保育士の成長を妨げている!ことについてお伝えしました。
今回は「現場の声」についてです。子どもや保護者と直接関わっている保育士の声を、大切にしている経営者や園長も多いでしょう。現場の声を参考にする分には構いませんが、左右され過ぎていたり意思決定まで委ねたりしていませんか?
経営者・園長の声‐よくある誤解
・経営者が保育士一人ひとりの意見に耳を傾ける姿勢を持ち続ければ、保育士からどんどん良い意見が上がってくるんです。
・管理者のポストにいる人間にも、部下に対して傾聴することが最も大切だと教えています。
よくある誤解に対する正しい対応方法
情報収集と決断の区別がつかなくなってしまう
「現場の保育士一人ひとりの意見を大切にして、それらを取り入れていけば皆のやる気も上がって、さらにどんどん意見が出る活発な組織になる」という考えがあります。これがすべての組織でそうなるかといったら、そうではありません。むしろ逆の方向に行く組織も少なくありません。
経営者・園長の一番大事な仕事は「決断」です。経営者・園長は経営者・園長にしか決められないことを決断する立場であり、経営者・園長は保育園を円滑に運営して行くという、責任を果たすための決断をすることが求められます。
正しく決断するためには正しい情報が必要です。経営者・園長は自分の立場では、なかなか正確に把握できない現場の情報を仕入れるため、現場に耳を傾けます。これは正しいでしょう。
しかし、情報収集と決断の区別がつかなくなってしまう人がいるので注意が必要です。情報収集のついでに、決断まで部下に委ねてしまうケースです。会社や保育園全体の成績に責任を取れない保育士が決断することで、責任の所在が曖昧なまま組織が進行してしまうことになります。
園長が決断から逃げ腰になってしまう「錯覚」を乗り越える
決断に対して逃げ腰になってしまう経営者・園長は、次の三つの錯覚を持っている可能性があります。
一つ目が「経営者・園長の役割は部下のフォローだと思っている」
部下に与えた権限の範囲であれば、「それは自分で決断しなさい」と伝えることもあります。ただ「部下を信頼しているので」という理由のもと、本来は自分が決めなければならない事柄まで、部下に丸投げしているリーダーがいますがこれは間違いです。これは経営者・園長の責任放棄といっても過言ではありません。
二つ目は「部下に経営者・園長が決定したルールを評価する機能があると錯覚している」
ルールを決めるという機能は責任とセットで与えられるため、自分の実働にしか責任範囲を持たない部下に、リーダーが決めたルールを評価する機能はありません。それにも拘わらず、「部下に嫌われたらどうしよう」などと、部下からの評価に怯えてルールを決めることができない経営者・園長は失格です。
三つ目は「部下や他の人に責任を譲ることで、自分の責任が緩和されると錯覚している」
一人ひとりの責任は、その役職についた時点で決定します。誰に決断を委ねようが求められた結果に対してどうだったか、ただそれだけで判断されるわけであり、判断が誰の意見を尊重した判断なのかは、評価する人にとってはどうでもよいことです。「現場のやりたいという熱意を尊重しました」「私もどうかと思ったんですがね」というのは、最低の言い訳です。
まとめ
現場の意見に一切耳を貸さずにワンマンで突き進む、というのはよくありません。そうすることで、自分が把握していない情報を見落としてしまう可能性があるからです。
しかしもっとダメなのは、「現場の意見に耳を傾けすぎて決めないこと」。リーダーの最も大事な仕事は「決断」です。決めるべきことは責任をもって決断してください。